あの日から俺と南條さんは毎週のように一緒に駅へ行った。
逢坂はユカちゃんと下校デートの日はもちろんだが、そうでない日も逢坂を断ってまで南條さんと駅へ行った。
 
南條さんは教育学部に通う大学生らしい。
毎週水曜日はうちの近所にあるおばあちゃんの家の畑の手入れをしているそうだ。
その畑が手入れでボロボロスニーカーと無駄に大きなカバンの理由だ。
 
南條さんと駅まで行くのはすごく楽しかった。
大した話はしていないのに、何が面白いわけでもないのに、何故か楽しかった。水曜日が楽しみになった。
 
「なぁ、亮、なんで最近一緒に帰ってくれないわけ?」
逢坂に唐突に聞かれた。
「水曜だけだろ。」
「なんで水曜?なんかあんの?」
話そうと思ってふっと口を閉じた。
別に話してまずいことじゃない。ただ、何故か言いたくなくて、目をそらすと逢坂は首をかしげていた。
「いや、別に亮が話したくないなら無理やり話させる気はないけど・・」
逢坂は少し悲しそうに言った。
「別に大したことじゃねぇよ」
はははっと俺が笑いながら、逢坂の方を叩くと
「だよな」
と、彼もそう言い返して笑った。
 
どうして、言いたくなかったのか自分でも謎で、明日の逢坂と帰らない日を楽しみにしている自分が謎だった。
明日がすごく楽しみで胸の中でクジラが跳ねるように心臓はリズムを刻んだ。
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